2010年10月3日日曜日

佐藤秀峰さんカバーイラストができるまで密着


漫画家 佐藤秀峰さんの仕事場にお邪魔して、カバーイラスト制作の様子を密着させていただきました。写真は下書きが終わり、色塗りを始めるところです。今回、カバーイラストを描いている様子はネット生中継もやらせてもらいました。既に発売されている単行本の表紙をなぜ今描いているのか? ガジェ通記事で経緯についてまとめたので御覧ください


仕事部屋の隅に、前日発売された第9集がポンと置かれていた。素人目にはこれはこれで綺麗に仕上がっているように見える。この完成した表紙を見たとき、秀峰さんは「うーん」と思ったとのこと。長期連載してきた漫画の最終巻のカバーイラストを自分で描かないというのは苦渋の決断だったに違いない。おそらくどのようなデザインだったとしても本当の納得はできないだろう。この表紙は白衣をモチーフとしてデザインしてあり、紙の手触りも「白衣」風になっているそうだ。



主人公「斉藤英二郎」の顔をできるだけ大きく描きたい、とのこと。この絵のベースになっているのは、秀峰さんが自分撮りしたデジカメ写真。「自画像風ですね」とも。


最近の単行本を並べてみる。最終巻は「第9集」となる。カバーイラストの色は、意識して変えていっているとのこと「(漫画は)書店でどこまで買ったかわからないことがあるので、色を変えることでそれを防ぎたかった」とのこと。カバーイラストは毎回主人公の斉藤だが、腰から上を描いた場合と、もう少し顔に近づいた場合とを交互に描くようにしている。



これまでの表紙は背景は真っ白だったのだが、今回は背景も着色されている。なにか意味があるのかきいてみたが特に意図はないとのこと。しかし、これまでの表紙とは明らかに雰囲気が違う。



色塗りが進むと、秀峰さんの雰囲気もやや変わってきた。集中力が高まってきているように感じた。手の動きがはやい。


主人公の「英二郎」という名前は、初代担当編集者さんからとったらしい。「本人は嫌がってましたね」とのこと。なんで嫌がることをするのか……。


当初、色塗り中は会話できない、とのことだったんだけど、秀峰さんが「意外と大丈夫」ということで、生中継のコメントに声で受け答えしたりしていた。ニコ生は音声アリで放送。普段の放送は音声ナシなので、これは貴重だ。


秀峰さんが「失敗したなぁ」とつぶやきながら押入れから別の画材をひっぱり出してきた。本人の言うところによると、あまりうまくいっていないらしい。「でも、最初からやりなおすと、たいてい前より悪い結果になるんですよね」。そういうものなのだろうか。


筆をぬぐう布。


自分をモデルにして自分撮り写真をとり、それを見ながら絵を描いていた。カバーイラストに天井と壁の間の線が薄く入っているが、それは「写真そのまま」なんだそうだ。「これは病院の中という設定ですか?」ときくと「どこでもないです」とのこと。白衣を着ているので病院かと思ったのだが、「自画像」という裏設定から考えると、これは主人公の自宅の部屋の中、という想像も可能だ。これまで秀峰さんは「主人公と自分自身って重なる部分があるんじゃないんですか?」という質問に対して、いつも否定的な答えだったのだが、最終巻のこのカバーイラストの「自画像」という設定にはなにかメッセージが込められているように感じた。出版の世界のタブーに挑み、ウェブでの出版の可能性を拓きつつある佐藤秀峰。医療の世界のタブーに挑み続けた物語の主人公、斉藤英二郎。物語の中の彼はどのような答えを出したのか? まだ最終巻を読んでいない人は是非。



パレット。手前は水入れ。ペットボトルの底の部分を切り落としたもの。



できるだけ正面・真上から見ながら描きたい、とうことで、作業はほとんど立っておこなわれています。


「完成の判断はどこでするんですか?」という視聴者の質問に「なかなか終われないんですよね」と語る。時間があれば手を加え続けてしまう、とのこと。


作業スペースの全体像がわかる写真を。


いよいよラストスパート(と、僕は感じた)。


完成! 21時スタートで翌午前2時に終了。制作時間5時間でした。

この中継を仕事しながらご覧になっていたという漫画家の一色さんのコメントを引用させていただきます。

「みなさまご覧になっていたこの作業に、対価が払われない、と言うのが今回の『カバーイラスト無し』のそもそもの出発点のひとつだったわけですよね」 @ishikitokihiko

プロの漫画家がコンディションをつくり、集中力を高めて挑むカラーのカバーイラスト制作。密着してみて、これに報酬がまったく支払われていないということに、僕も改めて疑問を感じました。

このカバーイラストは単行本と同じ材質の紙にタイトルなどもいれた形で印刷して、500名ほどの方にプレゼントされるそうです。どんな形で完成するか楽しみ。応募方法の発表は秀峰さんの日記でおこなうそうです。


■参考リンク
[ガジェット通信] 緊急生中継! 表紙絵のない『新ブラックジャックによろしく』最終巻、作者による幻のカバーイラスト描きおろしライブ
[漫画onWeb:佐藤秀峰の日記] 最初に表紙を描かないことを表明した日記
[漫画onWeb:佐藤秀峰の日記] 表紙を描かないことを発端とした妻の智美さんとのケンカその1
[漫画onWeb:佐藤秀峰の日記] 表紙を描かないことを発端とした妻の智美さんとのケンカその2