2010年10月20日水曜日

『規制バスター』原さんへの質問まとめ第1回



※原さんへの質問はこちらからどうぞ

『規制バスター』原さんへの質問を募集しましたところ、何件かの質問やコメントをいただきました。質問と原さんの答えをここに掲載したいと思います。

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原さんと阿佐ヶ谷の住人さんとのやりとり1ターン目
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■阿佐ヶ谷の住人さん:
私は政治理論を学んでいる大学4年生です。
日本にも政策コンサルタントをしていらっしゃる方がいると知って、びっくりしています。
大変興味があるので、2,3質問をさせてください。


質問1:顧客に依頼された政策案を、立法化するのに失敗した場合はどのような対応をとるのか。

■原さん:
まだビジネスとして立ち上げて間もないので、仕組みとして確立していませんが、
・政党が依頼人の場合は、国会審議のサポートなどの事務作業に応じて課金しています。
・企業が依頼人の場合は、成功報酬を基本に考えています。(法案成立という最終地点だけでゼロか100かではなく、例えば法案提出、メディアでの認知度向上などの中間的成果も含め)

■阿佐ヶ谷の住人さん:
質問2:どのような基準、価値観をもって政策提言をおこなっているのか。政策コンサルがどのような政治的立場をとるかで、同じ課題であっても提案される政策は変わってくると思います。原さんはどういう基準で、政策立案を考えているのでしょうか?


質問3:根本的には、(レントシーキング)利権政治と同じではないか。たしかに業界団体が政治家に規制緩和を働きかけるのと、一般人が政策コンサルという仲介を経て政治家に働きかけるのでは違いがあるようだが、それでもレントシーキングが行われているということ自体に大差がないのではないか?

■原さん:
現時点では、「合理的な理由なく維持されている旧来の制度・仕組み、特定利益団体のために維持されている政策・制度」などを主たるターゲットとして、仕事を請けています。
典型的には、特定の業界団体だけが便益を受けて、アウトサイダーと(広く薄く)一般国民にマイナスが生じている制度で、後者をサポートして制度改革を求めるケースです。逆の側のサポートを求められたら、仕事を請けません。
もちろん、「どちらが国民の利益か」というのは、そう単純に割り切れないことの方が通常ですが、現状では、「分かりやすく、国民のためになっていない制度」がまだ多く残っており、ここが当面の業務分野です。

■阿佐ヶ谷の住人さん:
質問4:外交や政府主導の経済政策など、一般の国民の日常生活とはかけ離れた分野の立法こそ政策コンサルタントやシンクタンクの真価が発揮されると思います。そのような青写真はどうやって策定され、どうやって売り込まれるのでしょうか?

■原さん:
政党の依頼をうけて特定領域の政策づくりを手伝う、(端的にいえばそのための営業活動を兼ねて)メディアで政策提言を発信する、といったことをやっています。


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原さんと阿佐ヶ谷の住人さんとのやりとり2ターン目
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■阿佐ヶ谷の住人さん:
さっそく返信をいただき恐縮です。
まず意外であったのが、「貝殻制度」(A.ギデンズ)がそんなにもたくさんあるということです。このようなビジネスが成立するほど、日本に無駄な制度がたくさんあるということは意外です。
しかし、そのような「貝殻制度」を壊していくことがビジネスとして成立するということは、やはり依頼主がその「貝殻制度」のために不利益を被っているということだと思います。
仮に、それがレントシーキングではなく、あくまで公益に資するというのであればそれを証明する必要が出てると、私は思います。
それは政策工房が「レントシーキングをしているのでは」という批判を予防するための知恵でもあります。
たとえば、政策工房のHPで現在取り組んでいる「貝殻制度」について公示するというのはいかがでしょうか。その際に、顧客が誰であるかということも併せて公表することが、公明正大に公益性をアピールすることになると思います。

■原さん:
顧客企業と案件は、原則、非公開にしています。これは、端的にいえば、公開は困るという顧客がいるからです。
これは、この種の事業を、ビジネスとして成立させるのか、非営利事業として行うのか(広く募金を集めて行う、自腹で慈善事業として行う、国の補助金をもらって行うなど?)という設計の問題でしょう。
今のところ、私は、「公益のためになっていると思うことを、ビジネスとして成立させる」という道を模索したいと思っているので、おっしゃるような”クリーンさの徹底”は犠牲にしています。


■阿佐ヶ谷の住人さん:
せっかく丁寧にお答えいただいたので、加えて二点質問をさせてください。
一点目が、政策領域はどこからどこまでをカバーしているのかということです。
法は膨大にあり、そのすべてを「政策工房」がカバーするのは大変だと思います。
たしかに経産省の領域であれば、原さんも見識が深いことだと思います。
しかし、依頼によっては全く馴染みのない領域のものや、複数の領域にまたがることがあり、法的な調査が必要な場合もあるでしょう。
どのような政策について強く、どのような政策に弱いのでしょうか。そして、どのように「貝殻制度」の無駄さを調査し、その判定基準はなんなのでしょうか。

■原さん:
案件ごとに協力者を探してやっているケースもありますが、すべての分野には対応できません。
また、判断基準は、最後は自分の判断としか言いようがないのですが、判断の是非を省みる機会があるとすれば、「メディアでの主張の公開」(雑誌掲載など)だと思っています。つまり、ある政策を実現するため、活動の一環として、例えば「この制度は~という点が不合理で、改善すべき」といった主張をメディアに公開することがあります。これが世の中から受け入れられなかったり、「逆におかしい」といった批判が来る場合、当初の判断が間違っていたということなのでしょう。

■阿佐ヶ谷の住人さん:
二点目が、料金です。
案件ごとの成功報酬をベースに考えられているとのことですが、個人と政党といった団体では料金体系に差があるのでしょうか?
というのも、例えば、私が「貝殻制度」に気付いても、自分の不利益にならない限りは、わざわざお金を払って「政策工房」さんに、その制度の是正を依頼をするとは思えないんです。
個人が公益のために、「貝殻制度」直しを依頼するのは極めてレアだと思います。
そのようなときに料金がどれほどかかるかということは、大きな問題です。
たとえば奨学金のように、○○のような制度があれば公益に資すると思えれば、お金を払うことにためらいはないと思うのですが、逆に制度を減らすという方向でのインセンティブは弱いです。
いろいろと失礼があるかもしれませんが、一切悪意はありません。
お答えいただける範囲での、回答をお待ち申し上げております。

■原さん:
報酬体系は、まだ模索中なので、確立したものはありません。
ただ、ビジネスとして成立させようとすれば、改善によって特に利益を得る人から回収するしかないと思います。
十分なお答えになっているか分かりませんが、取り急ぎ。


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原さんと阿佐ヶ谷の住人さんとのやりとり3ターン目
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■阿佐ヶ谷の住人さん:
返信ありがとうございます。
なるほど。
政策工房は、アメリカのシンクタンクのような政策コンサルタントというよりは、「貝殻制度」を減らしていくような「法律オーガナイザー」をイメージしており、そしてビジネスモデルとして、いわゆる社会起業家を念頭に置いているということですね。
私が思うに、すでに社会起業家として成功している方々と政策工房の最たる違いは、政策工房が「利権政治をしている」という批判を受けやすい事業であるということだと思います。
詳しい事情が分からないので、なぜ顧客が非公開を望むのかという点は私には想像がつきません。
しかし、なんらかの事情があることでしょう。
それを踏まえて、いち大学生でしかない私が切に願うのは、政策工房が出来るだけ自らのメディアをもち、極力公開性を保つことです。
国民としては、たとえそれが「貝殻制度」であれ、密室で公共的な決定が下されることに拒絶感があるからです。(つまり、旧政権に対するアレルギー反応)
お忙しいなか、わざわざご丁寧に質問にお応えいただき、誠にありがとうございました。


大変勉強になりました。
政策工房が成功することを心よりお祈り申し上げます。

■原さん:
貴重なご指摘いただき有難うございました。
こうしたご指摘・ご質問をいただくのは、私にとっても刺激になり有意義なので、また何かありましたらご連絡いただければ。


当面、規制改革の話については、SAPIOでの連載などを続けていますので、よろしければご覧ください。



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原さんへyukkunさんとのやりとり
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■yukkunさん:
政策工房では、法律改正案・提言まで作成することがお仕事のようですが、その先には、実際に国会議員にその内容をアピールしていく必要が当然必要かと思います。
いわゆるロビイング活動ですが、これまで政治献金などおこっていなかった小さな業界団体などがロビイング活動をするには何からはじめればいいでしょうか?

■原さん:
一般論として言えば、政治とのコネを慌てて作るよりも、・そのテーマに関して、味方になる人を増やす(1社より複数社、1業界より複数業界、業界だけより学者など第三者)、・メディアで「これはやるべき」という論調を作るといったことから入るのがよいと思います。「政治献金するので、この問題について国会で質問してほしい」なんていうのは、本来贈収賄でつかまる話ですから、あくまで「政策としての正しさ」を訴えるのが基本です。

■yukkunさん:
ネットユーザー共通に興味のある法律として著作権法があります。ご存知の通り、権利者側、ユーザー側の複雑な思惑が歴代絡み合って、つぎはぎのような法律となってしまい、「こんなことができないの?」という状況がおきてしまっている法律です。
現在、フェアユースについて審議会での議論が行われてパブリックコメントの募集などがなされていますが、パブリックコメントでアプローチする以外に、権利者側として、または一般ユーザー側として何か取りうる方策などはあったりするのでしょうか?

■原さん:
この件は、ちょっとなかなか答えにくいのですが、一般論としていうと、「パブリックコメントでのコメント」というのは、多くの場合あまり意味がありません。「パブリックコメント」は、多くの場合、結論はほぼ出ている段階で、最後のみそぎプロセス(「いちおう、一般の人の意見も聞きました!」)としてやるようなもので、本当に意見を期待されていると思うと、全然違ったりします。
これまた、役所と近い業界では知られていることですが、役所の担当課が「賛成!」コメントのひな型を作って、関係者に提出を求めたりするケースもあります。


より有効なロビイングの方策としては、
・検討準備段階なら、各省担当者にあたる。
・「~審議会」で議論されている段階なら、委員にあたる。
・政府としての対応がほぼ決まってしまった段階なら、与野党国会議員にあたる。
といったものが基本的動きと思います。


お答えになっているか分かりませんが、取り急ぎ。

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原さんインタビュー記事へのmixi日記より
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■日記より:
『学校の天井の高さが3m以上だと法律で定まっているのは、石炭ストーブを使用していた頃にできた規制が元』という例を引き合いに出して、意味のない規制に立ち向かう俺たちってカッコいい?的な記事なんですが…


規制にも、色々あると思うんですよ。
何でもかんでも規制緩和して『最小国家』だの『リバタリアニズム』だのを満足させる世の中をつくろうと目論んだところで、ただの野放しな無法地帯が出来上がってしまっては話になりません。


『不要な規制は撤廃する』


基本的には賛成ですが、問題は撤廃しようとする意図、撤廃することは何のため/誰のためになるのか、ということであり、そこを見極めていかなければ、とんだ騙しのテクニックで我々は自身の首を絞めることにもなりかねません。


派遣労働、夜間・深夜労働、食品添加物や農薬の使用基準、等々


企業の横暴、暴走、拝金主義を規制して我々を守るはずの基準を、わざわざ『彼らの身になった』思考に誘導され、緩和する動きに一役買ってしまった例は、枚挙に暇がありません。


力のある側が、更に貪欲に儲けるため、労働力を買い叩くための規制緩和なら、我々にとって有害無益なものとなるのは想像に難くはないでしょう。


記事の中で例に挙げられた『学校の天井の高さ』、確かにきっかけは石炭ストーブを使用していた時代の換気の都合によるのかもしれませんが、その設計が結局、空間的見通しのよさや圧迫感のなさを形作り、子供たちに良い影響を与えているものだとすれば、わざわざ得意気に出自を掘り返し、撤廃を主張する必要はないでしょう。
空間的な余裕や、しっかりした設計を厳格に守って建造すれば、万一の災害の時にも、それは子供たちを守るものとなりうるでしょう。
また、大規模災害時は、校区ごとに学校の建物が地域住民の避難所に使われることもあります。
建築費用をケチッたが為に、低い天井で余裕のない空間に押し込められた場合の避難民のストレスはいかほどのものでしょう。
自分達が『使う』立場になった時のことを考えての主張とは、とても思えません。


『費用をケチるなというが、我々の税金が使われるんだ。どこからそんな金を捻出するのか』と仰る向きもあるでしょう。
当然です。


我々の税金だからこそ、我々の子供を今あるいは将来預ける、また、万一の時は地域住民の避難所になる『学校』などといった、本当に我々のためになることに使われるべきではないでしょうか。
差別ゴロのたかりに対して優遇的な措置をしたり、真に必要な者を押し退けて声の大きさだけで恫喝してくるような輩に生活保護を支給したり、自浄能力もない大企業を甘やかすのに税金を投入したり、談合を繰り返し公共事業の受注が既得権益だとでも勘違いしているかのような土工の利益を確保したりするより(国と地方とが混ざっちゃいましたが)、みんなが直接使うものをきちんと造らせる方がよほど適正な税金の使い道だと思います。


何でもかんでも


耳あたりのよさそうな言葉や、『新しさ』を装いながら近づいてくるものは、分厚い化粧の下に旧態依然たる力を守ろうという画策が隠れていることも多いものです。


昨日は『裏を読め』なんて記事がありましたが、これこそまさに、練習問題のような話ではないでしょうか。

■原さん:
きちんとした根拠ある規制ならよいのです。例えば「天井3メートル」について、「子供たちにとって見通しがよいのでないか」とか「災害時の避難場所として使うときに圧迫感がなくてよいのでないか」といった議論があって、それをきちんと検証して、「3メートル規制」が維持されていたのであれば、何も問題はありません。
しかし「3メートル規制」(すでに撤廃済み)の場合、実際には、そんな議論は全くないまま、過去の遺物が思考停止状態で維持されてきました。「子供たちにとって圧迫感」という議論は、一部にありましたが、結局、実験で検証した結果否定され、「3メートル規制に合理的な根拠はない」として、撤廃に至りました。


念のためながら付言すれば、何かの規制について、「無用な規制でないか、撤廃すべきでないか」という問題提起がなされたとき、「いや、こういう合理的な意味・理由があるのでないか」と逆方向の指摘が出てくることは大事なことです。
そのうえで、それらが本当に合理的な根拠かどうかを検証すればよいと思います。


以上です。